「詰め物やかぶせ物がとれた」とアポイントを取られる方がたくさんいます。
「オタクでやったものが…」という場合、たいていの場合うちでやったものではありません。
患者さん自身、過去にどこの個所をどこの歯医者でやったか記憶があいまいになっていることが多いのです。ですので、直近でかかった歯科医院でやったものが、とれたのだと勘違いしている場合が多いのです。
こちらも「またこの方も勘違いしてる」とモヤモヤした気分で対処してますが、ここでは、どうしてとれるのかについて、記してみたいと思います。
詰め物(かぶせ物もそうですが)その作り方から、考えてみましょう。
- 虫歯ができる
- 歯科医院で虫歯を完全に除去して、詰め物が外れないように、また詰め物を歯科技工士さんが作りやすいようにするため、形を整える
- 型をとる
- 型を取ったものから、石膏模型を作製する
- この模型をもとに、歯科技工士さんがワックスで歯の形を修復するひな形を作る
- このワックスのひな型を模型から外し、金属を流し込む通路を作り埋没材という材料に埋めて固める。
- この埋没材を高温の炉に入れて、ワックスを蒸発させる。
- そこに高温で熱し溶かした金属をドロドロにし遠心力を利用してドロドロ金属を埋没材の中に流し込む
- 冷めたら、埋没材の中から、金属の詰め物を掘り出し、調整してピカピカに磨いて詰め物の完成!
- (ものすごく手間暇がかかっているんです!厚生労働省の官僚の方々!もう少し歯科技工士さんの苦労を報われるようにしてください!)
- それを、歯科医院で患者さんのお口の中で調整して接着剤で接着します。
さて、ここからが、核心です。金属と歯を接着剤で接着します。金属と歯は硬さが違います。金属の方が固いですよね。保険で使用される金銀パラジウムは特に硬いです。
(ゴールドの方が柔らかいので歯に馴染みパラジウムよりトラブルは少ないです。)
歯は毎日毎日、食事をするため、人によっては、歯ぎしり・食いしばりで100~150㎏ぐらいの力でぶつかり合います。同じ硬さのもの同士だと、均等にすり減っていきます(歯はすり減っていきます)が、硬さが違う金属は、なかなかすり減ってくれません。よって、金属の部分に非常に負荷がかかることになります。
歯と金属の境界部のする減り具合に違いが生じ、段差ができる場合もあります。
金属は、接着剤によって歯とくっついているわけですが、その接着剤が破壊されてきます。
接着剤に異変が生じるには、どれだけその金属部に力が加わっているかによってにかかってくるので、人それぞれです。
一概に何年とは、言い切れませんが、何十年も持つ人もいれば数日でとれる人もいます。
全ては、力が元凶なのです。
また、接着剤が半分とれて、半分くっついていると話が厄介になります。
半分接着剤がとれた場合、接着剤がとれた隙間に唾液が侵入し、虫歯を起こす細菌も入り込む事になるのです。
そして、何年もの間金属の詰め物の下で歯を溶かし続け、大きな虫歯を作り歯痛や違和感とともに、歯科にかかることにもなります。
接着剤の破壊具合にって、ボロっとはずれるか、歯痛や違和感を生じて来院されるかのどちらかになるのです。
長くなりましたが、これが詰め物やかぶせ物が外れるメカニズムです。
患者さんはこのメカニズムが判らないので、歯医者のせいにする場合もありますが、一概にそうとは言えないということ御理解いただけたらと思います。